レアル・ベティスの「基準」とは


「いつになったら落ち着くの?」

そんな声がベティコたちの間から聞こえてくる。私も同じ思いだ。

2013年からの5年間で8人もの人物がベティスの指揮を執っている。その中にはこの期間に2度指揮した者(ペペメルとファンメリーノ)も含まれているで、実質10人と言っていい。

人間はそれぞれ違う。好きな食べ物も、趣味も、得意な仕事も、考え方も。似ていたとしても、同じということはない。
その「違い」が5年間で10回もこのクラブには持ち込まれた。

「いつになったら落ち着くの?」

きっとみなため息交じりにそう呟いている。

もちろんフロントも安定したチーム作りを目指している“はず”だ。うまくいっていないだけで。
それをめざして選手や監督をリクルートしている“はず”だし、そのための「基準」をもって採用すべき人物をリストアップしている“はず”だ。

それではベティスの設けている「基準」とはいったいどんなものなのだろうか。
あくまで個人的な分析に基づいて考察してみたい。

どこのチームもシーズン20得点するストライカーが欲しい。しかしベティスのような小さいクラブにとっては現実的な目標ではない。しかし彼らはシーズン15得点できる選手を連れてこようと常に考えている。ベティスはそこに一番金をつぎ込むことに決めているようだ。
前回の夏はサナブリアをヒホンから獲得。誰もがポテンシャルを認める大型CFだ。さらに彼とポジション争いをさせるためにヌマンシアからアレグリーアをレンタルバック。2人とも長身でポストプレーもこなせるタイプ。ルベンとの相性を考えての採用だと思われる。
今オフにはそのルベンと同タイプのセルヒオレオンをオサスナから獲得することがほぼ決定している。さらにマンチェスターシティからノリートをレンタルで獲得することを狙っているとの報道もある(たぶん実現はしない)。
つまり、彼らは2トップのシステムを基本としていると考えていい。サナブリアからセルヒオレオンまで4人とも1トップで起用することのできる選手だ。しかし、同じタイプを2人ずつ保有する現状から見て1トップを基本とするのはナンセンスだろう。

中盤は非常に興味深い。来シーズンビジャマリンにいないパルドを除くと、攻撃を組み立てられる選手がセバージョスしかいない(彼も来シーズン戻ってくるか不透明)。ホアキンもできるが年齢を考えても多くを望むべきではない。その代わりにペトロス、ブラサナク、ジョナスマルティン、と汗かき役の選手が三人いる。彼らはそれぞれ微妙にキャラクターが違うが、フロントは同じ文脈で考えていると私は思う。なぜなら、ベティスにはこのタイプの選手を多く獲得してきたヒストリーがあるからだ。
例えば、エンディアイエ、ロレンソレジェス、ディガルドがそうだ。ドンクもここにはいる。この中に4-4-2のボックス向きの選手はいない。全員、中央を3人以上で構成するシステムに向いている選手たちだ。
OK。人事部はその狙いを持っているのだろう。しかし、その相手役となるビルドアップの出来る選手、リズムを作りテンポを生みだす選手がいない。パルドはそれができる選手だった。違いはあれどシャビトーレスもできたし、ベティコたちが愛したベニャはそのタスクを完璧にこなしていた。近年のベティスはあまりこのタイプに重きを置いていないように思える。ホアキンの獲得は別として、ベルドゥやラフィーのポジションは一つ前であり、アタッキングサードで力を発揮するタイプ。セバージョスは前者よりもレンジは広いがタイプとしてはこちらに属す。
さらに興味深いのは、ベティスのトレードマークともいえるサイドアタッカーをほとんど獲得していない点。獲得に動いたのはムソンダくらいではないか。現状でもサイドハーフとして戦力になる選手はセフードのみ。ここは今オフに注目すべきポイントだろう。もし獲得に動かないようであれば、それはチーム作りをする上での大きな意思表明だと受けとるべきだ。
ここ最近の動きと現状を見る限り、スカウトチームは中央を3人で構成するのに適した選手を探していると言っていい。とくに、汗かき役と10番タイプを追いかけているはずだ。

ディフェンスはわかりやすい。とくにサイドバックにはダイナミックで攻撃参加の得意な選手を求めている。ここは疑いようの余地がない。センターバックには対人に強いタイプと足元にも優れてビルドアップに参加できる選手の2タイプをベースの組み合わせとしている。セオリーどおりという感じ。ただ、センターバックはかなりおざなりにされているポジションであり、あまり金をつぎ込む意思はないようだ。名の知れた選手を獲得することはないだろう。経験豊富な引退の近いベテラン選手か、4大リーグ以外で活躍している若手を主に狙っているのだろう。とにかくこのポジション最大の基準は安いことだ。

ゴールキーパーを考えるのは難しい。めったに変わらないポジションであるうえに、ビッグクラブではない限り、狙ったキーパーを連れてくることは困難なのが現状だからだ。多分どのチームも、市場に出ているうちで手の届く最善のキーパーを狙っている。現在求められているスキルでいえば、足元の技術ということになるが、ベティスはなくてもOKとしているだろう。ハイボールに関しても、所属するリーグの特色上それほど優先順位が高いとは言えない。もっとも優先順位が高い項目はシュートストップ(当たり前だが)であり、それに求められる反射神経、俊敏性の高いキーパーをリストの上位に置いているはずだ。

ころころと監督が変わるせいで、その指揮官が採用したいシステムに合う選手がそろっていないという事態が何度も起きてきた。たぶん来シーズンもそれは繰り返される。すでにセルヒオレオンの獲得がほぼ決まっているのを見ても、このクラブにおける監督の意向はそれほど重要度が高くない。要するに、現状の戦力を最大限活かすことのできる戦術を用いる監督をリクルートする必要がある。過去数年のベティスはなぜかそれをしてこなかったのだが。現戦力だけで考える限り、4-3-1-2に近い4-3-2-1がベターだろう。システムに固執するのは好きではないが、選手たちのキャラクターを考えるとこれが一番しっくりくる。採用する監督の基準が全く不明であるがために(過去五年の8人に共通するのは全員スペイン語話者だということぐらい)チームのヴィジョンが見えずらいのだが、獲得してきた選手を見ると、

攻撃はサイドバックが高い位置で幅をとり、2トップと10番タイプの選手とのスペクタクルで得点する。守備は中盤の汗かき役がカウンターの芽を摘み、サイドバックの上がったスペースをケアする。中央ではやらせない。

といった大雑把なコンセプトになるのか。

あくまで限られた要素からの私なりの考察だが、今オフのチームの動きを見るうえでベティコの助けになれば幸いである。愛のある厳しいご意見、お待ちしております。


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