二十歳の日本代表、ロシアへ


「…中田がキープ、まだ持っている、ドリブルであがる、ドリブルであがる、左足!どうか!こぼれている!」「やったぁぁぁ!」「岡野ぉぉぉぉ!」
1997年11月16日、フランスワールドカップアジア最終予選3位決定戦。日本が初めてワールドカップ出場を決めた、伝説の「ジョホールバルの歓喜」。
あれから20年。フットボール日本代表は、先日8月31日に6大会連続ワールドカップ出場を決めました。
人間でいえば、20歳はオトナの仲間入りをする年齢。ロシア大会に対する期待は、今までよりも、もう少し高い(内容の濃い)ものになるでしょう。


これを書いている時点(アイルランド時間9月4日1:00)で、すっかり新鮮味はなくなっていますが、ロシアワールドカップ出場を決めた、オーストラリア戦を振り返ってみたいと思います。
(マッチレポートとか戦術分析とか、とても苦手です。筆では書いていませんが、筆が進みません。この試合に関する動画をYouTubeで観るものの、すぐに関連動画を観はじめます。関連動画はくせ者です。そのうちのひとつは必ず観させられます。あとひとつ、あとひとつ、そうしているうちに朝です。こんなふうに、この記事を書く時間がどんどんなくなります。つまり遅くなったのは、私ではなく関連動画のせいです。代わりに謝ります。どうもすみません。)


引き分けでよかったオーストラリア


まず試合前の両国の状況について整理したいと思います。
日本は勝ち点17で首位。2位に勝ち点16でサウジアラビアが続き、同じく勝ち点16ながら得失点差で3位にオーストラリアが位置していました。
この節、サウジが対戦したのはUAE。そして最終節の組み合わせは、日本vsサウジ、オーストラリアvsタイ。サウジがUAEに勝ち、オーストラリアがタイに勝つ計算でいけば、日本はホームで戦えるこのオーストラリア戦で絶対に勝って決めてしまいたい。対するオーストラリアは、最終節ホームで最下位のタイと戦えるので、引き分けたとしても悪くはない状況でした。
さらに、29日に行われたUAEvsサウジの試合で、サウジが負ける波乱が起きたため、オーストリアの引き分け狙いに拍車がかかりました。
これは間違いなく戦術面と、選手だけでなく監督やコーチたちのメンタル面に影響を及ぼす大きな要素だったはずです。

乾、浅野の起用


この試合でハリルホジッチ監督は、少しディフェンスラインを高めに設定し、前線からプレスをかけてボールを奪いに行くフットボールを選択しました。前半はそれが少しうまくいかず、両ウィングの乾と浅野が低い位置まで下げられる時間が多くなりましたが。
このフットボールは非常にスタミナを消耗し、とくにサイドの選手は上下動が増え、負荷は極めて大きなものになります。そのなかで、コンディションがよく、抜群のスピードでカウンターの武器になる浅野と、ドリブルで勝負ができ、ボールキープ力の高い乾が先発で選ばれたわけですが、2人の守備面での貢献は特筆すべきものでした。
こうした自己犠牲の精神、チームへの献身は間違いなく日本の強みのひとつです。
また、乾が時折みせたファウルをもらうテクニックは、実にリーガ・エスパニョーラでプレーする選手らしく、状況を読む力、駆け引きのうまさを示す素晴らしいプレーでした。日本ではあまり好まれるプレーではないかもしれませんが、トップレベルで闘っていくうえでは、間違いなく必要なスキルのひとつです。

なぜユリッチをベンチに


オーストラリアは3-4-3というよりも、ロビー・クルーズをセンターフォワードに置いた、ほぼ3-7のような布陣でした。クルーズはトップ下タイプの選手で、テクニックがあり、ドリブルや裏へ飛び出すプレーを得意としている、ボールプレーヤーです。
オーストラリアはアンジェ・ポステコグルー監督が就任してから、従来得意としていたキック&ラッシュのようなロングボール戦術から、丁寧にボールをつないで攻撃するポゼッション型のフットボールへとスタイルを変えました。そしてこの日もそのスタイルは変えずに、引き分け狙いのフットボール展開していたので、フィールド上にボールプレーヤーを増やし、自分たちがボールを持つ時間をできる限り長くして、日本を消耗させる戦略だったのだと思います。
しかし、そうすることで、同時にクロスボールから得点したり、日本が前がかりになったときに、カウンターから一発で得点する可能性(日本にとっての脅威)を削ぐことになりました。
もちろん結果論ですが、日本にとっては身長190cmのトミ・ユリッチが先発出場していた方が怖かったはずです。試合後の記者会見で、きっとオーストラリアのジャーナリストたちも、そのことをポステコグルー監督に質問(追及)したのではないでしょうか。

井手口は世代交代の象徴か


この試合で大活躍した井手口。チーム最年少(21歳)ながらスタメンに抜擢され、豊富な運動量と、フットボーラーとしてのインテリジェンスを感じさせるポジショニングで攻守に貢献し、さらに勝利を決定づける2点目を記録しました。これにより、先制点を記録した22歳の浅野も含めて、世代交代待望論が様々な方面から聞こえてきます。
しかし、そもそも「世代」という考え方は必要なのでしょうか。純粋にフットボーラーとして、ベストな選手を選んでいけばいいのではないのでしょうか。
「若い選手に経験を積ませないと、この先が不安だ」という意見も分かります。しかしA代表で活躍できるような若い選手を育てるのは、あくまでユースのカテゴリーまでではないでしょうか。A代表は、常に“今”勝たなければいけないステージです。
新しいと輝いて見えるものです。新しい革靴を買うと、それまで履いていた革靴が少し劣って見えることがあります。でも実は「新しい」だけで、本質である履き心地とデザインはどちらの方がいいのでしょうか、という話です。
ことフットボールにおいて「新しい」は、それほど価値のあるものだとは思えません(興行面は別)。
井手口や浅野を新たな「世代」の旗振り役として見るのではなく、ひとりのフットボーラ―として評価するべきでしょう。この試合においては、二人ともスタメンにふさわしいパフォーマンスを見せたと思います。
という、試合とはあまり関係のない話でした。

1年後が垣間見えた試合


この試合で、日本はある意味で“受動的”な試合をしました。ボールを保持し、自らのスタイルを固持する相手にたいして、それに合わせた戦術をチョイスし、守備面で全員が約束を守りハードワークし、少ないチャンスをものにする。今までアジア予選ではほぼなかった展開でした。しかしワールドカップでは、往々にしてこの展開で試合が進みます。もちろんそれは、基本的に日本よりも力が上の国のほうが多いからです。
この試合の日本は本当に強かった。それは、前に「ある意味で“受動的”」だと述べたとおり、戦術としては“受動的”だったかもしれませんが、“能動的”に試合自体をコントロールできた点にあります。(多分)意図してボールを持たせていた、といった具合でしょうか。
体格で劣る相手に対して、スタミナ、敏捷性で上回り、こうした試合ができたことは、とても明るい材料だと思います。
それをうけて、ヨーロッパの、特にゲルマン人系の国(北欧、英国連邦、オランダ、ドイツなど)を相手に、この試合のような戦い方を選択すれば、勝つチャンスは大いにあると思います。特にオーストラリアと同じ、アングロサクソン系である英国連邦の国(というよりは各地域)相手には、非常にいい試合が期待できるのではないでしょうか。

リヤドでの過ごし方


この試合に勝ったことで、9月5日に行われる最終節のサウジアラビア戦は、事実上消化試合となりました。同日に行われるオーストラリアvsタイの結果次第ですが、かなり強度の高い試合が予想されます。
そのため、すでに香川選手と長谷部選手が離脱したように、コンディションの悪い選手を出す必要は全くありません。ナショナルチームは試合数が限られているため、予選ではあるものの、選手をテストする場となるかもしれません。その場合は、ロシアワールドカップとは気候も対戦国の特徴も、まるで違う試合なので、戦術理解度とその実行力を見ることになるでしょう。
オーストラリア戦から選手をガラリと入れ替えることは、サウジアラビアやオーストリアへのリスペクトが足りないんじゃないか、というような意見があるかもしれませんが、今の日本代表は、誰が出てもリスペクトを欠いたような試合にはならないと思います。
なぜなら、キリンチャレンジカップだろうが、ワールドカップだろうが、日本代表チームが相手チームへの敬意を欠いた試合を、私は一度だって見たことがないからです。


サウジアラビア戦についても、このような記事を書くことになるだろうと思いますので、次回もお時間あるときに読んでください。

関連動画には厳重注意しておきます。


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