フットボールマネーー各リーグの放映権分配システムー


「金は天下の回り物」
金はこの世の中を絶えず流れているものである。だからその流れにそって流さなくてはならない。心配せずとも流せば自然に自分のところにも入ってくる。そういうものなのだ。その流れの中にいれば、の話だが。

欧州フットボールにおける移籍市場の流れは年々激しさを増している。激流は欧州のみに収まらず、中東、中国、そしてアメリカにできた大きな湖にも流れ込む。多くの水が流れ込むようになった地域は、土壌が豊かになり作物の収穫量が増える。そしてその作物は水源地域に納められ、豊かな人々はさらに肥えていく。

年々高騰する移籍金の背景には放映権収入の増加がある。その要因は多くの人口を抱える東南アジアや中国、アメリカなどの地域での需要が増えたことがひとつ。もうひとつには各国内での放映権獲得争いに参戦する企業が増えたことで契約料(放映権料)が跳ね上がったことがあげられる。

Jリーグでも話題となったこの放映権収入。具体的に各国トップリーグはどれくらいの放映権収入を得ているのだろうか。※1

現在最も価値の高いリーグはイングランドプレミアリーグである。2016-2017シーズンより新たにSkySportsとBT Sportsの2社と3年総額約£5.136bnの契約を結んだ。海外からの放映権収入を合わせると次の3シーズンで総額約£8.5bn以上の放映権収入を見込んでいる。
3年総額約£8bnと考えると1シーズンの総額は約£2.6bnになる。このうちの約£0.1bnがパラシュートペイメント(降格クラブに与えられる報酬)に充てられるので、最終的には20クラブで約£2.5bnを分け合うことになる。

プレミアリーグの分配方法は

・国内放映権料

1. 50%→均等分配。各クラブ約£38mずつ。
2. 25%→メリットベース(リーグ順位)。傾斜配分。1位には約£40m、最下位には約£2mを配分。
3. 25%→ファシリティフィー(放映回数)。放映回数に応じて変動。1試合あたり約£1mで10試合以下の放映でも約£10mは保証される。

・国外放映権料

1. 100%均等分配。各クラブ約£47mずつ。
これをもとに計算した各クラブの放映権収入は次の通り。



数字は全て一の位が£1m

1位のチェルシーが合計約£150mなのに対し、最下位のサンダーランドは約£98mの報酬を受け取る結果となっている。その差は約£50m。これだけを見るとサンダーランドの報酬は少なく感じるかもしれないが、この後見ていく他国のリーグに比べるこの額は非常に多い。特に注目すべきは「均等分配分」だ。1シーズンプレミアリーグに所属しただけで約£85m受け取れる。こんなリーグはほかにない。リーグ下位のクラブでも高額選手を連れてこられる経済力は、こうした収入の多さに支えられている。


UEFAリーグランキング首位の座に就くスペイン、ラリーガはどうだろうか。
2015-2016シーズンまでクラブ単位だった放映権契約が2016-2017シーズンからリーグによる一括管理に変更された。理由は上位2クラブ(言わずもがなだがマドリーとバルサの2クラブ)と下位クラブとの間にあまりにも大きな収入格差があったから。リーグはTelefonica、Movistar、Mediapro、の3社と3年総額約€2.63bnの契約を結んだ。また近年のラリーガ所属クラブのヨーロッパでの躍進もあり、国外からの放映権料収入も増加。結果的にクラブ間の収入格差は縮まった。

ラリーガの場合

・国内&国外放映権料を合わせた90%の額を20チームで分け合う。残りの10%は2部へ。

1. 50%→均等配分。各クラブ約€50mずつ。
2. 25%→メリットベース。過去5年のリーグ順位をもとに傾斜配分。
3. 25%→リソースジェネレーション。例えば「クラブ会員数」「シーズンチケット売り上げ」「観客動員数」などをもとに配分。


これをもとに計算した各クラブの放映権収入は次の通り。


数字はすべて一の位が€1

1位のマドリーの収入が約€150mとプレミアリーグで優勝したチェルシーと同じ。最下位のグラナダは約€62m。プレミアリーグに比べると少ないが、2015-2016シーズンに、例えばラスパルマスが得た放映権収入が約€18mだったことを考えれば劇的な変化だと言える。以前よりは容易に高額選手を連れてこられるようになったLaLigaの各クラブが、今後ヨーロッパの舞台で今にもまして輝きを放つ可能性は高いと言えよう。


上記の2リーグと大きく違うのがドイツ、ブンデスリーガ。クリーンな経営の印象が強いこのリーグはイメージ通りのシンプルな分配方法。欧州4大リーグ(ブンデスリーガの他に、ラリーガ、プレミア、セリエA)の中で最も収入格差が少ない。リーグ自体の競争力を高めようとする意図が読み取れる。2016-2017シーズンの放映権収入は国内国外合わせて総額約€830m。

その分配方法は

・国内&国外放映権料

1. 65%→均等分配。各クラブ約£30mずつ。
2. 35%→メリットベース。過去5年のリーグ順位をもとに傾斜配分。

これをもとに計算した各クラブの放映権収入は次の通り。



数字は全て一の位が€1

1位のバイエルンでもプレミアリーグ最下位のサンダーランドより約€30m少なく、ラリーガ最下位のグラナダと大して変わらない。しかし、ブンデスリーガは2017-2018シーズンより放映権契約を更新。4年総額約€4.64bnの国内放映権収入を得る。さらに国外からは4年総額約€1bnの収入を見込んでいる。これにより、来シーズンの放映権収入€1.4bnを18クラブで分け合うことになり、1位のクラブは約€100m-€120mを得ることになり、最下位でも約€60m以上は受け取れるだろう。


これに対してセリエAの分配方法は少し複雑だ。2015-2016シーズンよりSky ItaliaとMediasetと3年総額約€2.82bnの放映権契約を結んだイタリアトップリーグは、国外からも3年総額約€900mの収入を見込んでいる。これにより1シーズンあたりの放映権料は約€1.3bnとなる。

この分配方法は

・国内放映権料

1. 40%→均等分配。各クラブ約€16.2mずつ。
2. 30%→リソースベース。そのうちの25%がサポートベース(例えば「クラブ会員数」「シーズンチケット売り上げ」「観客動員数」)。残りの5%がクラブがある地域の人口に応じて配分。
3. 30%→メリットベース。そのうちの10%が1946年以降のリーグ順位。15%が過去5年のリーグ順位。残りの5%が昨シーズンの順位に応じて配分。

・国外放映権料
1. 40%→均等分配。各クラブ約€6mずつ。
2. 60%→10位以内のクラブに配分。1-3位約€27mずつ、4-6位約€18mずつ、7位約€14.4m、8位約€12.6m、9.10位約€9mずつ。

これをもとに計算した各クラブの放映権収入は次の通り。



数字は全て一の位が€1

セリエAの特徴は収入順位がリーグ順位と大きく異なる点。伝統的な強豪クラブが常に多くの報酬を得られるようなシステムになっている。言い換えると初めてセリエAに昇格してきたクラブ、例えばクロトーネには厳しいシステムだ。セリエAは特定のビッグクラブを作りそのクラブがヨーロッパでも活躍することで、リーグに入る収入を増やしさらにレベルを上げていこうとする意図が見てとれる。


4者4様の放映権料分配。これはあくまで放映権収入のみの話であり、このほかにチケット、マーチャンダイズ、スポンサー、オフシーズンツアー、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの収入がプラスされる。デロイトが毎年発表しているフットボールクラブ長者番付で2015-2016シーズンの1位になったマンチェスターユナイテッドは総額約€689mの収益を記録している。収益€700mを越えるクラブが現れるまでにそう時間はかからないだろう。

今後より勢いを増すであろうこの流れに、各リーグはどう対応してゆくのだろうか。誰が流し誰が流されるのか、注目だ。



※1:本記事の狙いは各リーグの放映権収入の比較や分配方法の違いを見ていくことで、各リーグの運営方針やそれに伴い発生するクラブ間の収入格差を分かりやすく説明することにあるため、各クラブの放映権収入はかなり大雑把な数字を用いている。

参考・参照
http://www.totalsportek.com/
http://www.news-postseven.com/archives/20161021_459185.html
http://www.dailysportek.com/
https://www2.deloitte.com/jp/en.html
http://www.espnfc.com/german-bundesliga/10/index
http://www.calcioefinanza.it/
http://www.ilnapolista.it/



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